2014年はイエズス会サービスカンボジア(以下JSC)シソポン事務所のプロジェクトの中から、溜め池、農業ローン、障がい者のためのトイレ、牛銀行、教育支援、通学用自転車、お米による奨学金、奨学金、学校の植樹用の若木の支援をしました。 2015年のスタディーツアーでは、昨年支援をしたSantepheap村の溜め池や農業ローンの取組みを見てきました。
JSCでは、近年貧しい人々の自立のための生活支援をするとともに、将来のために子どもたちの教育に力を入れています。
2014年支援一覧
1. 開発支援
Santepheap村への溜め池と農業ローン
Santepheap村は北側をタイ国境に面する村です。 最近になってCMAC(カンボジア地雷対策センター※)により地雷が除去された地域で、草木がボウボウと生い茂り、道路も未整備です。昨年は、この村に溜め池を作り、農業ローンの支援をしました。
※CMAC:Cambodian Mine Action Centre カンボジア地雷対策センター
溜め池 縦30m×横40m×深さ3m
ツアーで訪問した時には、溜め池の周囲には子どもや牛が落ちないように木柵や植樹がされていました。 訪問した2月は乾季も終わりに近いのですが、3mの溜め池には水が1m残っていました。 雨季には満杯になり、飲料水や田畑に使われます。村の人たちは溜め池ができる以前は、飲料水を買っていました。この村では、 井戸は故障しやすい上、土壌の関係で飲み水には適さないため、安全な雨水を溜める方が良いそうです。 柵作りや維持管理は村人たちの手で共同で行っています 。
地雷事故に4回遭った男性は、ご自分の畑はなく、小作で生計を立てています。タイ国境に接する地域では、野生の象や虎が出るそうです。新しい家はしっかりした造りのため、安心して暮らせるようになりました。
2)農業ローン 30家族
このローンでは、JSCが選んだ30家族が5家族1組になり、1家族あたり300ドルをJSCから5年間借り続けます。 年利息は3%。その内訳は、0.7%はJSCへ返済、0.3%は村のコミュニティのために使用。 残りの2%は村のために積み立てます。日照りや洪水で不作になり、ローンを返済できない時のために村全体で積み立てておく仕組みになっています。 昨年は全30家族がローン返済できたそうです。
貧しい人々にお金を貸してくれる銀行はありません。あったとして高い利息を払わなければなりません。 これまでは、生活費を稼ぐために多くの村人たちは道路工事や建築現場で働くためにすぐ近くの国境を渡って出稼ぎに行っていました。 国内で働くにしても、親だけでなく、働ける子どもも一緒に移動して、他人の所有する土地の田植えや収穫の仕事をして、収入を得ていたそうです。その間、子どもは学校に通えません。また、残された子どもたちは祖父母に預けられるか、子どもたちだけで生活をしなければなりませんでした。
昨年、村に溜め池と農業ローンの仕組みができたことで、村長は現在もタイに働きに行っている人たちがもっと戻ってくることを期待しています。しっかり者の村長や村人の笑顔には喜びとやる気が溢れていました。この村で家族の生計がたって安定すれば、子どもたちは学校に通って勉強が続けられ、次世代を担う力になるでしょう。
この村の溜め池と農業ローンの取り組みは、持続可能な自立への第一歩となったのではないでしょうか。いつも貧しい人々を最優先にして寄り添うJSCのスタッフと共に、金銭のみならず村の人々は自分たちに自信を取り戻しているように感じました。私たちかんぼれんのメンバーはJSCの橋渡しを介してそのプロセスに参加でき、連帯の機会に恵まれています。
2. 教育支援
なぜ、JSCは教育に力を注いでいるのか?
1975年4月にポル・ポトを中心とした軍はプノンペンに入場し、実質的にポル・ポト政権が成立しました。 しかし、1979年1月にベトナム軍に支援されたヘン・サムリンなどの軍がプノンペンに入場し実質上ポル・ポトは政権を失いました。
3年9か月の間にポル・ポトは教育制度をなくし、数多くの教育者・教師を殺し、学校の建物を破壊しました。その後、カンボジア内の紛争は長年続き、1991年秋にようやく紛争に関わっていた4派により「パリ和平協定」が調印され、1993年5月に総選挙が行われました。
言うまでもなく、その間(およそ18年間)、正式な学校教育はほとんど行われていませんでした 。シソポンはBanteay Meancheyバンテアイミンチェイ州にあります。Banteay Meancheyとは「勝利の要塞」を意味しますが、今は勝利や要塞の全くない、カンボジアの中でも最も貧しい州のひとつです。そして、子どもがいなくて閉校せざるをえない日本と違い、子どもがたくさんいるのに未だに小学校のない村があるのです。
JSCは貧しい人々に支援をするとともに、将来を見据え、教育に力を入れています。かんぼれんもその方針に賛同し、さらに多くの子どもたちが教育を受けられるよう協力し続けたいと思います。
学用品 100人
お米による奨学金、奨学金
奨学金の支給は、親または本人が障がい者27人、貧しい家庭の子ども13人、計40人。それぞれ子どもやその家族の状況に合わせて支給されました。内訳は以下の通りです。
- 子どもが働かなくても学校へ通えるように貧しい家庭へ米の提供 20家族
- 親または子ども本人が障がある家庭の奨学金 27人
- 家庭が非常に貧しい子どもへの奨学金 13人
通学用自転車 50台
小学校は各村にありますが、中学生になると家から学校まで3~5kmと遠くなります。自転車を買えない家庭の子どもたちのために、中古自転車を提供しました(日本製の中古自転車1台$50)。
学校の植樹用の若木
若木272本は子どもたちの手で植樹をし、その後も子どもたちが水やりをして管理します。
3. Light of Mercy Home 子どもの家
JSCが運営するプノンペンにある障がいのある子どもたちの施設。
ここでは、身体障がい、視覚障がい、聴覚障がいなど様々な子どもたち30人以上が助け合いながら暮らしています。毎年スタディーツアーで訪れるとカンボジアの伝統舞踊や音楽演奏などで大歓迎してくれます。