2020年の支援

かんぼれんでは、例年2月に スタディーツアー を行い、支援先であるイエズス会サービスカンボジア(以下JSC)シソポン事務所を訪問しています。そこで、直に前年の支援報告書を受け取り、支援先の人々にも会いに行ってきました。ところが、今年2021年は新型コロナウィルス感染症流行のため、残念ながら中止になり、2020年支援報告書はメールで受け取ることになりました。

シソポンスタッフによると、支援先のバンテアイミンチェイ州でも、昨年の夏には学校が休校、国境が閉鎖されタイへの出稼ぎも一時ストップ。秋に一旦解除されたものの、今年に入り、首都プノンペンはロックダウンし、州を跨いでの移動は禁止。バンテアイミンチェイ州では、再び学校が休校、食堂も休みになっているそうで、厳しい生活を強いられている人々が多いことが懸念されます。

このような状況でも、JSCのスタッフは各地の村を回り、障がいのある人、貧しい人たちへの支援を続けてきました。当初予定していた支援プログラムはほとんど実施され、残った予算は政府の感染防止対策支援(米の給付)に当てられました。

シソポン最新情報

新型コロナウィルスの感染で世界が一変してから2年近くになります。現地との行き来が困難な中、2021年9月にインターネットを通じてJSCシソポン事務所のスタッフより現状を教えてもらいました。

新型コロナウィルスの状況ワクチンの接種が順調に進み、成人へのワクチンはほぼ行き渡たっているとのこと。また、6~11歳の子どもへの接種が始まり、3~5歳への接種も計画中です。感染はおさまりつつあり、休校していた学校は徐々に再開しています。

シソポンのプロジェクトの進捗状況スタッフはマスク、アルコール消毒、ソーシャルディスタンスに気をつけながら業務に当たっていて、今年計画したプロジェクトはほぼ終了しています。今年かんぼれんが支援した家の新築・修理、車いす、牛銀行、緊急支援としての米の提供、スモールローン、奨学金、制服・学用品の支給などです。

現地からの報告を受けて、予想上回るペースでワクチン接種が実施されていることに正直驚かされました。これは、そもそも人口が多くないこと(1530万人)、大量の中国製ワクチンの供給があったこと、住民の接種へのためらいが少ないことなどの理由が考えられるようです。
接種率でも近隣諸国はおろか先進国をも上回る水準(保健省9月21日発表では1回以上接種を受けた人の人は全人口の78%) です。

ただ、9月末時点で隣国タイの感染状況が収まらず、バンテアイミエンチェイ州の住民にとっては、国境を超えた就労が難しい状況が続いていました。また、9月に降った大雨と洪水による被害が深刻です。マレイ地区では、安全な場所へ避難した人もいたようです。洪水で道路の損傷箇所もあり、物流が困難な状況が想像できます。
できることから着実に支援を続けるシソポン事務所を、これからも応援していきましょう。

2021年12月ニュースレターより一部抜粋

 

2020年支援一覧

1.Santipheap村へのコミュニティーローン

2.開発支援

  • 障がい者、貧しい人のための家 新築2軒+修理2軒
  • 牛銀行 3家族
  • 農作業の講習会 4回
  • 障がい者、貧しい家族への少額ローン 5家族
  • 野菜畑作りの支援 5家族

3.教育支援

  • 障がい者、貧しい家の小学生への奨学金 8人
  • 障がい者、貧しい家の中学生への奨学金 22人
  • 学用品(文房具、教材など) 40人
  • 通学用自転車 30人
  • 校庭の植木の提供 3学校

4.車椅子支援

  • 車椅子 20人、三輪車椅子 3人
  • 車椅子の修理 79台

5.健康支援

  • Bossthom村でお米の緊急支援 50kg×15家族
  • 地雷被害者への支援品 3人

6.Light of Mercy Home 子どもの家

 

1.Santipheap村へのコミュニティーローン

JSCシソポン事務所がSantipheap村に行った6年に渡る取り組みをご紹介します。

Santipheap村は北側をタイ国境沿いの村です。 現在の人口は425家族1686人ですが、 国境沿いのため、1973年から1993年まではカンボジア内戦の戦場となった場所でした。そのため、内戦後も多くの地雷と不発弾が残されていたため、CMAC(カンボジア地雷対策センターCambodian Mine Action Centre)が地雷除去を終えた後、ようやく人が移り住むようになった地域です。

人々が住み始めた当初、この土地は農業には向かないと思われていたため、村人は毎日日帰りで国境を越えてタイへ働きに行く、大変貧しい暮らしをしていました。

  • 2010年 小学校建設(5教室)
  • 2014年 ため池の建設、コミュニティーローンプログラム開始

JSCでは、2010年に村の子どもたちのために小学校を建設しました。ちょうどその頃、この土地が農業に適していることが分かったため、2014年にはローンプログラムを開始しました(農業ローンやため池作りはかんぼれんの支援で行われたものです。詳しくは2014年支援報告へ)。

ローンは、JSCが選んだ30家族を対象に総額$9,000、利息は年3%(このうち2%は村に、0.3%は借り手組合credit committeeに、そして0.7%はJSCに配分)というものでした。
このプログラムは予想以上の成果をあげ、 2020年には 60家族が参加、総額$20,000まで規模が大きくなりました。この内$9,000はJSCが出資していますが、残りは村が出資しています( 利息年1.8% )。
そして、村が得た利息は以下のような村の様々な活動に用いられています。

ローンの利息で行った村の整備

  • 2015年 村の共同池にフェンス設置
  • 2017年 村の中心に向かう200メートルの道路整備
  • 2018年 公民館修理、机2台・椅子30脚購入
  • 2020年 テント(5m×12m)、机10台、椅子100脚購入
         米倉庫の修理   

写真:テント、机、椅子は村民の結婚式やお葬式の時に低価格で貸し出されます

JSCがローンプログラムを始める前は、この村で生計をたてることは難しく、道路も未整備なため、村へ行くことさえ大変でした。しかし、このローンプログラムが始まったことにより、村人たちは自分たちが得たお金で村の整備を進め、9割の人が生活を改善することができました。 現在では、それぞれが家を大きくし、車やバイクを購入できる家庭では、子どもたちの学校の送迎もできるようなっています。 村人たちは「JSCの支援によって、村は何も無いところから、色々なものを用意できるようになった」と大変喜んでいます。

 

2. 開発支援

障がい者、貧しい家族のための家

Dyさん(55歳) 元バイク運転手
障がい: 片麻痺
家族: 妻、子ども4人
Dyさんは、バイクの運転手として毎日早朝からお客さんを市場まで送迎し、その合間をぬって家族の送迎も行う生活をしていました(当時の収入は$5~7/日)。
ところが、2020年7月に倒れ、手足に麻痺が残る大病をしました。一時はJSCより車椅子を提供しましたが、Dyさんは歩行ができるようになると車椅子を返却しました。生活は苦しく、妻の実家での同居をしていたために、かんぼれんからDyさんの障がいに配慮した家を提供しました。

 

Serbさん(68歳)
家族: 孫8人、娘はタイへ出稼ぎ
Serbさんは娘がタイに働き出ているため、孫8人と狭い茅葺きの家に暮らしていました。今では、カンボジアでも茅葺きの家はほとんどありません。生活が苦しい上に、高齢で働くことができないため、JSCでは新しい家を提供しました。

牛銀行 3家族

2020年は新たに 3頭の牛を貸出しました($837/1頭)。
牛銀行では、JSCが雌牛を購入して希望する人に貸し付けます。借り主は牛を育てて子牛を産ませます。1頭目と3頭目はJSCに戻しますが、2頭目と4頭目以降は農家の所有になります。

Deabさん シングルマザー 息子と2人暮らし
夫が2年前に家を出て行ってしまい、生活に大変苦労をしていました。そのため、JSCでは現金収入を得るために、牛を貸し出しました。

 

障がい者、貧しい家族のための少額ローン 5家族

ボストン村の5家族に少額ローン(250$/5年間)の新規貸し付けをしました。うち3家族は孵化器の購入、鶏小屋の拡張、ひよこの購入し、ニワトリの飼育数を増やすことができました。

kongさんは、ニワトリの飼育小屋を作り、飼料を購入しました。

農作業の講習会 4回(22家族)

JSCでは、秋にボストン村で農林水産庁から講師を派遣してもらい、4回農業指導の講習会を企画、実施しました(4回の内容;①牛の飼育、②ニワトリの飼育、③野菜作り、④米作り)。

  • 【講習内容】
  • 牛、ニワトリの飼育
    育て方、飼料、病気対応、ワクチン、繁殖について
  • 野菜・米作り
    種の選び方、土作り、肥料、収穫、翌年に向けての種の採取について

 

野菜畑支援 5家族

上記の講習会の他、野菜作りのために、5家族に50ドルの貸し付けをしました。

Honさんは、豆やキュウリ、キャベツを育てています。
作った野菜は自分たちで食べる他、一部は市場で売って生計の足しにしています。

 

3. 教育支援

障がい者、貧しい家庭の小学生・中学生への奨学金 30人

2020年は、30人の子どもたちに奨学金を提供しました。
カンボジアの農村では、現在でも子どもが働けるようになると小学校をやめて畑作業に出ることが珍しくありません。そのため、JSCでは、子どもたちが学校を続けられるように貧しい家庭に奨学金を毎月支給しています。

Kongkeaさん(21歳、大学生)小人症
家族: 両親(漁師の父も小人)、4人姉妹の長女

貧しい家庭でしたが、Kongkeaさんは勉強が好きなため、しっかり学び将来はよい職業に就きたいと望んでいました。そのため、JCSでは2014年に奨学金とお米を提供しました。その後、2016年に高校進学。高校は自宅から遠いため、JSCはシソポン教会にある学生寮を紹介し、彼女はそこから通学をしていました。
2019年にはMean Chey大学に合格し、奨学生に選ばれました。現在は、シソポン教会の学生寮から通学し、Information Technologyを学んでいます。彼女は「JSCからのタイムリーなサポートとシソポン教会の支援がなかったら勉強を途中で諦め、家に閉じこもり、外の世界を知らないで終わっただろうと」と大変喜んでいます。

 

通学用自転車 30台

自宅から学校まで遠い小学生8人、中学生15人、高校生7人に通学用自転車を提供しました($50/1台)。

 

4.車椅子支援

車椅子は初期の頃からかんぼれんが大事にしている支援の一つです。
2020年も、かんぼれんの支援でJSCは車椅子20台と三輪車椅子3台を提供し、79台の車椅子修理の費用を支援しました。

Keoさん(9歳) 小学校1年生
障がい 脳性まひ  足が不自由で歩けません
家族: 母と二人暮らし(2歳の時に両親が離婚)

2018年に幼稚園入園後、園までの送迎は彼女のおばさんがしてくれましたが、園ではずっと座ったままで、自分で教室の外に出ることは出来ませんでした。 小学校入学時、校長先生が、彼女の「お友だちと同じように勉強したい」願いを聞き入れ、 車椅子の提供を求める手紙を書いてくれました。それが JSCに届き、早速スタッフが彼女の状況を調べ、2020年3月に彼女に車椅子を提供することができました。今では、彼女は学校内は車椅子で移動ができるようになり、Keoさんもお母さん、おばさん、学校の先生も皆が喜んでいます。

 

Seangさん(41歳) 電気技師
障がい: 脊髄の病気による腰と背中のしびれ
家族: 妻、娘

2003年(22歳)脊髄の病気で、腰と背中のしびれが取れないため、JSCは車椅子を提供
2005年障がい者職業訓練校(鳩センター)の電気修理コースに入学
2006年卒業後、自宅でテレビ、扇風機、スピーカーなどの家電修理を開始
電気修理は成功し、多くの顧客を抱えるまでになりました。しかし、Seangさんが自ら修理部品をマーケットに買いに出かけることはなかなか出来ませんでした。そこで、遠出が出来るように、JSCでは2020年6月に三輪車椅子を提供しました。
現在は、マーケットでお米を売る妻と、教員をしている娘と3人で幸せに暮らしています。Seangさんは「JSCのサポートがなかったら、今の自分はなかっただろう」と大変感謝しています。