かんぼれんの主な支援先であるイエズス会サービスカンボジア(以下JSC)シソポン事務所は、責任者のハムソックさんを中心に経理担当のビチェカさん、地域開発担当のバートさん、リュ―さん、教育担当のキムさんの5人という少人数のフルタイムスタッフでカンボジアの北西部にあるバンテアイ・メアン・チェイ州(島根県と同じくらいの面積、人口)を担当しています。メンバーはこの3年間、変わっていません。ますますチームワークよく活動している様子でした。
2019年支援一覧
1.Bossthom村とかんぼれんとのかかわり
数年前にBossthom村の小学校を訪れたのは、大洪水の後でした。村人が、自分たちの手で造った学校の壁も天井も穴だらけでグラウンドも教室の床も半分乾いていてどろどろの状態でした。
その時、校長先生が新しい学校を造ってほしいという願いを私たちにしたことをよく覚えています。しかし、具体的な話を聞くと、校舎だけでなく、新しい校舎を建てるためには、大洪水によって凸凹になった地面の整備も必要で、合わせると6万ドルかかるということでした。
今もそうですが、当時のかんぼれんにはその金額の支援は到底むりでしたから、その願いに応えることはできませんでした。幸いなことに、日本の別のNGOの援助によって、校長先生と村人が望んでいた新しい小学校はできました。
しかし、その後かんぼれんは、シソポンのイエズス会サービスカンボジアを通して、Bossthom小学校の校長先生、そして村人とかかわり、支援は続きました。
その援助内容は、教育の面では、学校敷地内に植樹し生徒がグループごとに気を世話する環境教育の取り組み、図書館のための本、通学のための自転車、学用品や奨学金などでした。
そして、村の障がい者や貧しい人々のために、新しい家を造ったり、修理をしたり、自立支援をのために牛を貸したり(牛銀行)、少額ローン、SRI(米作改善支援)や農家5家族ずつのグループへのローンもしてきました。
そういう数年にわたるかかわりがあって、今年、Bossthom村の小学校を訪れた時、JSCスタッフも全く知らされていなかった思いがけない出来事がありました。
まず、村の人々は、古い校舎で私たちのためにランチを準備してくださっていました。そして、ランチの後に、私たちを新しい校舎の教室に案内して、そこには、村長と村の役員たち、小学校の校長先生と教育委員会のメンバーたちが集まっていました。
何が始まるのかなと思っていたら、校長先生は、かんぼれんからの村や学校への支援の一つ一つのプロジェクトに言及した上、本当に心のこもった感謝のことばを述べました。そして、村長は感謝状を読み上げて渡して下さいました。
私は、びっくりして、恥ずかしい気持ちで感謝状を受け取って、かんぼれんが逆に、村のコミュニティーつくりに協力する機会が与えられたことに感謝していることを伝えました。
ポルポトの政策で、村の人々はバラバラになり、お互いに信頼できなくなりました。村長、校長先生、シソポンのJSCとかんぼれんの協力で、Bossthom村のコミュニティーの復活ができました。非常に嬉しい結果です。
かんぼれん代表 ボネット ビセンテ
2020年6月ニュースレター 巻頭言より
2. 開発支援
障がい者のための家 新築 1軒
クオングさん 67歳と68歳のご夫婦
娘夫婦はタイに出稼ぎに行き、孫を預かり育てています。養育費は送られてはきますが、家を建て替える余裕はありませんでした。そのため、12月にかんぼれんの支援で新しい家を提供しました($1350)。
障がい者、貧しい家族のための家 新築 1軒、修理 4軒
ソクンティさん(39歳) 4人家族
妻は病気で働くことができないため、彼らに古い家を修理する余裕はありませんでした。そのため、4月にかんぼれんの支援で家を修理しました($600)。
牛銀行 5家族
2019年は新たに5頭(5家族)の牛を購入しました。
牛銀行では、雌牛を購入して希望する農家に貸し付け、農家は牛を育てて子牛を産ませます。産まれた子牛1頭目と3頭目はJSCに戻しますが、2頭目と4頭目以降は農家の所有になります。農家は家族で牛の世話をしています。以前に貸し出した牛は計20頭に増えています($700/1頭)。
障がい者、貧しい家族のための少額ローン 5家族
少額ローンは銀行からは融資を受けられないような農家にJSCから期間3年~5年で$150~$300の貸し付けをする仕組みです(今年は各家族$250)。農家は、この資金で肥料を購入したり豚やニワトリに投資して収入を増やします。
$250 を借りてニワトリの飼育を始めました。
米作改善活動講習会 2回(22家族)
JSCではこの数年間、SRIの普及を進めています。SRIは米の収量を増やす仕組みで、直まきではなく苗床から始めて田植えをし、きめ細かく水田を管理することで従来の倍の収穫を目指します。JSCは7月に二人の講師を招いてSRIの講習会を開催しました。
3. 教育支援
貧しい家庭の小学生・中学生への奨学金
農村では、今でも子どもたちが働けるようになると学校をやめ畑作業に出させることが珍しくありません。JSCでは、学校で学びを続けられるように貧しい家庭の子どもたちに、奨学金を毎月支給しています。
バンナークくん(15歳) 中学生家庭は貧しい農家ですが、両親は彼に勉強を続けるように励ましています。彼の夢は警官になることです。
スレイディープさん(16歳) 中学生彼女の父親は目が不自由です。父親は彼女に勉強を続けさせたいと考えているため、かんぼれんで支援をしました。彼女も将来は婦人警官を目指しています。
中学生への通学用自転車 30台
カンボジアの農村部では、小学校はそれぞれの村にありますが中学校、高校はありません。そのため、5kmも10kmも離れた中学校、高校まで通わなければいけない生徒のために、JSCでは日本の中古の自転車を提供しています($50/1台)。スタディーツアーではかんぼれんが自転車を提供した多くの生徒と会ってきました。皆、大変、感謝してくれて、大切に自転車を使ってくれています。
先生向け講習会
JSCでは、村の学校で教える先生の支援も行っています。9月にセミナーを開き、16人の先生が参加しました。
ラジオ教育番組放送 6番組
数年前からJSCではラジオの地方局を通じての啓蒙活動を行っています。
2019年は「女性の権利」「子どもの権利」、「虐待防止」「環境問題」「トイレの使い方」「障がい者」についてそれぞれ1時間の番組を放送しました。様々な問題を取り上げ、村人の認識を促すよう2回放送し、放送を聞いた人たちからの質問にも応えています。
4. 車椅子支援
車椅子の修理 12台
JSCでは、これまで障がいのある多くの人たちへ車椅子を提供してきました。
当初は地雷事故の被害者が多かったのですが、現在では、交通事故やポリオで身体が不自由になった人たちにも支援を広げています。
また、車椅子は単に提供するだけでなく、JSCではその後のメンテナンスやフォローアップも丁寧にしています。カンボジアの道路事情では、1年に3回くらい修理が必要になるそうで、1台につき修理費は平均$52かかるとのこと。かんぼれんでは2019年に12台分の修理費用($52/1台)を支援しました。
5. Light of Mercy Home 子どもの家
今年のスタディーツアーでも、プノンペンでJSCが運営する障がいのある子どもたちの施設、Light of Mercy Home を訪問しました。ここでは、聴覚障がい、視覚障がいのある9歳から25歳までの子どもたちが助け合いながら暮らしています(現在、男女各16人、合計32人)。
子どもたちは平日は学校に通い、週末には子どもの家でクメール舞踊、楽器の演奏、英語などのレッスンを受けています。
今年も沢山のパーフォーマンスで大歓迎してくれました。子どもたちが企画したカンボジアの各時代の衣装によるファッションショーに楽器演奏、ダンスなど。毎年クメールダンスを披露してくれていたのですが、今年はタイやフィリピンのダンスでした。最近はYouTubeのおかげで色々新しいものにチャレンジしているそうです。